特集:シティーホテル・リゾートホテルの研修利用
いわゆるシティーホテルとは、ただ宿泊するだけの機能に留まらず、数名から何千名まで収容可能な会議室や宴会場があり、豊かな時間を過ごさせてくれる飲食施設やスポーツ施設を備え、手間を掛けた料理や演出などでお客をもてなす総合的なホテルです。人が多く集まりやすい場所に立地してこその機能ですから、大都市の比較的中心部に多くあります。
一方、リゾートホテルは、豊かな大自然とのびのびとした環境の中で、時間に追われ、人とのやりとりに追われて疲れ消耗した身と心を休ませてくれるのが一番の役割ですから、美しい景色に恵まれた観光地や、温泉が湧き出るような場所に位置しています。
軽井沢浅間プリンスホテルの前に広がる雄大な浅間山の山容
これまで、宿泊をともなう研修会場としては、専門的な研修施設のほか、中規模の会議室を持つビジネスホテルが主に利用されてきました。シティーホテルの利用は、接待を兼ねた営業色の濃い会議やセミナーであったり、全社的なセレモニーやキックオフミーティングであったりすることが多く、ましてやリゾートでの会議・研修は、慰安旅行を兼ねたものや、会議のあとのゴルフなどとあわせて、接客・接待をおこなうものが主でした。
ここ1、2年の経済の好況を反映してか、こうしたシティーホテルやリゾートホテルを利用した研修・セミナーが増えてきています。その目的は、接待でも慰安でもなく、人事育成部や人材開発部がおこなう社員のための研修です。確かに、自社の保養所をすでに手放してしまった大手企業や、もともと研修施設を持っていない外資系企業にとって、増え続ける社員の研修会場の確保は頭の痛い問題で、とてもこれまでの既存の施設では規模の上で収容しきれず、十分な広さの会議室と、受け入れ可能なベッド数を確保できるホテルに目が向くのは当然の流れと言えます。
これを受けて、ホテル業界でも、積極的な受け入れをおこなうところが目立ってきました。今年の3月23日付けの日経新聞夕刊に、「新人研修特需」と題し、大幅に増えた新卒採用の会場として、都内や郊外、観光地のホテルが利用されたという記事が掲載されました。
たとえば、成田エクセルホテル東急は、これまで大きな会議室は地下1階の432平米のところしかなかったのですが、最上階11階のレストランを3分割可能な219平米の大会議室に改装し、1泊3食メイン会場費付きで、シングル料金15,500円(ツイン料金14,000円、いずれも税金・サービス料込み)の長期セミナー用パッケージ料金で提供し始め、すでに来年の予約もいっぱいの盛況だそうです。また、同様に客室を研修室に改装した苗場プリンスホテルが、600名10連泊の今春の新入社員研修を受注したことも書かれています。
需要と供給の関係で、観光シーズンの閑散期や、比較的余裕のある平日を利用し、よりリーズナブルな価格でこうしたシティーホテルやリゾートホテルの利用が可能になることは、会場確保に悩む研修担当者にとって非常にありがたい話です。しかしながら、今のホテルの機能やサービスが、ただそのままでよい研修会場になるわけではありません。ホテルの持つ良さが、研修利用には不向きな面も出てまいります。たとえば、コース料理主体のホテルの食事は、時間の限られた研修受講者には有難くないサービスになってしまいます。
右手に建つのがザ・プリンスさくらタワー
ここからは、ホテルを研修会場として利用する場合のポイントを箇条書きしながら、場所を提供するホテルにとっても、また利用する研修担当者にとっても、よりよい解決につながるような提案をまとめていきたいと思います。